「先生、もうがまんできません。だってほら、あの女性、服の下は全裸です」と、僕はいった。先生は、蝶の羽化をながめる子どものような目で僕をみてから、手元のノートにいくつかメモを取った。診察室にはあかるい陽の光が差し込んでいた。四月のあたたかくのんびりとした午後に、僕の性欲ははちきれんばかりにふくれあがり、冬眠から覚めた熊のように、あらゆる性的対象を喰らいつくそうとしていた。「それは興味ぶかい視点だね」と先生はいった──「すべての女性は本質的に全裸だ。国勢調査票を記入している時も、ドストエフスキーを読んでいる時も」。僕はほとんど首がはずれてしまいそうなくらい、おおきく頷いた。「そうなんです。彼女たちは裸なんです。どれだけ服を着ていようとも」
僕もコレを読みながらくびが外れそうなくらいうなずいた。マリアナ海溝より深く納得した。
診察は終わった。病院を後にすると、性欲はむしろ高まっていくようだった。処方箋を手に近くの薬局へ向かうと、そこでは白衣を着た女性たちがてきぱきと働いていた。この肉奴隷め、と、心の中で僕は罵った。清潔そうな顔をしているが、昨日の夜、いったいどれだけ変態的な性行為をしていたのか、わかったものではない。僕に薬を渡すその手で、昨晩いったいなにを握ったんだ。この異常性欲者、僕はだまされないぞ。と、そこまで妄想が一気に高まったところで、ふと我に返り、あわてて薬を受け取ると、薬局の外へでた。
ああ、いけない。僕は治療中だったのだ。外へでると、どうしても性欲が増してしまってまずいことになる。僕は心を静めるため、先生の言葉をおもいだした。「すべてのものが性的であるならば、そこにはあらゆる性が存在すると同時に、いかなる性も存在しない」。僕はこの言葉の意味がまったくわからない。しかし治療とはそういうものだと僕はおもう。
これは「空中キャンプ」というお気に入りのブログから抜粋したもので。
普段は映画や本のレビューを書いている方なんですが、それも本当に面白い。
文章に人柄がにじみ出ている感じで、読んでいるとほっとします。皆様も是非。
そして行きつけTRADEMARK、冬物たくさんUP中です。だんだん有名になって、高円寺でもTRADEMARKの名前は古着屋さんの間では有名になってきてるみたいです。昨日高円寺で入った古着屋さんで店長さんに「下北にTRADEMARKっていういい古着屋が出来たって、最近色々な人に言われて、言ってみたいんだよね」といわれてびっくりしました。
下北はいい古着屋がなくなったといわれたところ。もういちど下北に古着の波がやってくるか。