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あこがれる人、江頭「ワンクールのレギュラーより、一回の伝説」
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今日、浜田山というところでやる稽古としては最後の稽古になった。

ベランダに出たとき、隣の屋根に飛び移れるかふと気になった。

大体3メートルの距離。助走をちょっとつければ必ず飛べる距離だ。

なのに、失敗すれば大体3メートル下のコンクリートに叩きつけられるというだけで、ぼくは怖気づいてどうしても飛ぶことが出来なかった。

別にとぶ必要なんかどこにもない。それよりも一秒でも芝居の稽古に専念すればいい。

でも、失礼な話、稽古よりも、これを飛ぶことのほうが僕の中で公演がうまくいく気がした。

結局、一時間近くベランダのまわりを稽古にくわわりながらうろうろしたけど、飛べなかった。

かわりに桜の木の枝を伝って下にびよーんと下りるというターザンまがいのことをしてお茶を濁した。

なんて臆病なんだ。相模が「とべたってなにか変わるわけじゃない」といった。

だけど、ぼくは思うんだ。「演劇したって、なにか変わるわけじゃない」

でもやるんだ。じぶんのしたことがなんにもならなくても飛ぶんだ。

だから、飛べなかったことはほんとにくやしかった。なんて怖いんだろう。

怖い怖い。めっちゃこわい。

悔しい。小学生のころから変わらない。怖い。






劇の本番で、あの3メートルのがけを向こう側まで飛び越えるんだ。

君に会いに行きたい。




ほんとの瞬間はいつも死ぬほど怖いものだから

逃げ出したくなることは

今まで何度でもあった  ーブルーハーツの「終わらない歌」よりー
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