そう、夏だった。
日曜日のマンションの屋上に来た相模と俺は、さらにそこから貯水タンクにはしごを使って登った。
そこまで登ると、もうほとんどのビルの頭を通り越した。吉祥寺の空は青かった。
日に照らされながら、タバコをすってるうちに、この夏の日に練習だけしていることがもったいなくなってきた。
2007年の夏は一度きりだ。
江ノ島へ。
いかにもB級映画のはじまりのようなはじまりかたで、服装もそんな感じで二人はあからさまに夏仕様で
電車へ。お互いの格好が笑いを誘う。アロハ。ジーパン。そして到着。
波の音。水着ギャル。うぅむ。楽園じゃのう。
相模、なぜか沈んだ表情。「人多いのきらい」
しかし相模はそれ以上に「ビーチでの過ごし方」にまったく自信がないのだ。ばればれだ。
しかし、自分だってそんなの知らない。僕らはこのビーチにおけるマイノリティだと自覚しなければいけなかった。
確かにジーパンなやつは数えるほどしかいない。みんなおしゃれ海パンである。
波打ち際まで20メートルの浜辺。周りはギャルとギャル男とタトゥー&ボーズの人、清純派と優男とカメラで狙うおじさん(捕まってた。合掌。)二人でこの夏、ジーパンでいける最前線にいると感じた。
最初、ウィンドサーフィンをしている人たちの近くにいたが、移動する。白い水着の子がいかにも清純そうな感じで同じサークルらしき男達に囲まれて、
とびっきりの笑顔と水着より白い肌をきらきらと揺らしていた。もう清純というものは幻想だということは重々承知なのであるが、とても目に痛かったので、おそらく0コンマ5秒くらいしかみずに視線をそらした。でも覚えている。こういうときの男の動体視力はすごい。
ビーチ全体の中間地点あたりにからぶき屋根の掘っ立て小屋があって、その影でまただらーっとタバコをすう。あとからボールをもったいかした二人組みの男が来て焼きそばを食べ始め、
同じ小さい影の中にはいったもの同士、なんとなく会話をしだす。
目の前には体育座りになって海を眺める女の子達。他にも周りにはギャルがいっぱい。
僕らは視姦しにきた。と男達に伝える。事件はここからだった。
目の前の3人の体育すわりの女のこのところへ、いかにもなまっちろい太めの3人組みがやってきて、果敢にもナンパをはじめた。真ん中なんかチョコボール向井のようだ。僕ら4人はその光景をくすくすと笑いながら見ていた。かわいそうだけど、完全に面白い光景としかみえなかった。なんて光景だ。スタートの地点で負け戦のにおいがぷんぷんしていた。彼らはある意味僕よりかっこいいのだ。でも笑える。
こちらがわのいかした男子がボールを女の子の方へ転がした。体育すわりのまま、ふりむいてこっちにボールを放る女の子。
「バレーボールやろうか?」とこっちの男が聴く。
「そんなボール放っておいて僕らと遊びましょうよ」とチョコボール向井。
とまどい、どっちかというともうこの場から開放されたい女の子達。すべてが笑えて、僕は砂浜に突っ伏してタバコをすいながらげらげら笑った。他の3人も笑っていた。あのさえない3人組みに悪いなあと思ったけど、もうなんだかおかしかった。残酷。まあ、こっちの4人だって滑稽だし、もう、なんだか夏だなあと思ったんだ。
やがてチョコボールたちが去り、僕ら4人はなんとなく打ち解けて、視姦について語り、時折通り過ぎるかわいい女の子達にいかした二人が声をかけるのを見る。
俺と相模はかわいい子が来ても何にもしないんだな。どうもそんな気にもなれない。興味はあるけど、もっとこの男達二人組みが話しかけてきたシチュエーションのように、自然な流れならいいんだろう。仰向けになって真っ青な空にタバコを持った手をかざす。貝殻もかざす。
そこへなんとさっきの3人組みの男達が僕らの方にきて
「一緒にバレーボールやりませんか?僕ら東京から来たんですよ」
という名セリフを!
「ちけーじゃねーか!」といかした男が、彼らが去った後でつっこんでいた。
恐らく先程の復讐のつもりか、もしくは僕らというパワーを使って大群となって女の子をゲットしようという作戦に出たのだ。なんてなみだぐましいんだ。さえない3人ではあるが、僕はどっちかというとあのグループに近い。だから、なんともいえない。でもこの夏の砂浜ではとても笑えてしまった。
カキ氷を食いたいなんていかした男がつぶやいていたので、自分も食いたくなり、一人でふらりと買いに行く。
割と近くに売っていて、ハワイアンブルー味に。さっきの日陰のほうを見ると女の子二人が相模の横にきて、なにかみんなで話している。遠目であきらかに動揺している相模。
「400円です」
いかした男達の連れかなと思ったので、ちょっと食べたかき氷をもって元に戻る。カキ氷食べる?って男に渡すとやさしーとかいわれて、あーなんかもうのんびりした夏だなーいーなーとか思っていると
相模が「またどっかいこうぜ」という。
よくわからないけど、じゃあいいや、と思ってカキ氷は男にあげてまたふらりと歩く。
「あいつらがナンパに成功した」
なんだそうだったのか。
「4対2じゃ、邪魔だろ俺ら」
「うん、ま、そんなかわいくなかったしな」
なんだろうこの根拠のない余裕。しかし実際ほんとどーでもよかった。
「カキ氷あげちゃってよかったの?」
「いや、未練あった。」
「あほか」
というわけで少し遠くへ行って、そこらの海の家でイチゴ味のカキ氷を、相模はビールを。
海を眺めながら海の家の外のベンチにすわってまたしてもぼーっとする。
僕らの前にはオイルぬってだらーっとしている姉妹らしい二人。
たぶんまだ10代だ。
僕らのタバコをほしがって、しきりに「たばこほしい!」といっていたが、
完全無視!
その後他の男達がナンパし始めてタバコあげたりなんだりしていた。
それよりも、海はほんとによかったから、海と、そして空ばかりみていた。
そんなこんなで日も下ってきて、夕焼けになりはじめた。
またふらふら、今度はビーチを抜けて防波堤のほうへ。
近くのトイレで足を洗う。
防波堤をよじのぼると目の前は地平線とそら、雲だけだった。
眼下は波と小さい渦が、空の色をまぜこぜしながら形を変えている。
ふっとよこみたら中学生が2人、やっぱりぼくらと同じように海を見ていた。
10年後、俺らみたいになりませんように、と思った。
ずっとゆめーをみてー、幸せだった僕はーDAY DREAM BILIEVER そしてー かーのじょはクイーいん
を相模がくちずさむ。
その後防波堤の切れ目のがけの上にいこうということで、行こうとしたら、神社だった。険しい山登りになるかと思ったら、普通に見晴らし台みたいなのまでついていて楽にみれた。
ここの景色はもっとすごかった。オレンジ色の中に燃えるような赤い線が入った夕焼けが山の向こうに消えてく
下は断崖絶壁。見晴らし台のコンクリのむこうに1メートルあるかないかのスペースがあってそこから下を見ると、まさに火曜サスペンス、火サス!な断崖。そこからおしっこをしようとこころみるも、体が断崖に反応してでない。ていうか座るならまだしも、立って下をみるとほんとうに吸い込まれそうになる。やばかった。
神社の裏によじ登り、とんびの羽を見つけ、持ち帰る。今も部屋にある。
その後再びビーチに戻るともう日がほとんど落ちて、今度は夜の海辺の海の家でまたしてもぼーっとした。
そのころには砂まみれ、海水まみれなわけだが(防波堤に行く前に波打ち際をずぶずぶざばざばあるいた)、
かまわず、ベンチに座り、日本で売っちゃいけないだろという原材料が入っているビールを飲む。いいのかなあこれほんとに・・?
疲れたので帰る。
まあ、実に平和でした。
ひとつ、砂浜でもしももてたいと思うなら、ギャル男ではなく、筋肉むきむきでもなく、普通に
ジーパンとTシャツでいくといい。
浜の女の子はギャル男やタトゥーに飽きていた。なので、多少もてた。気がした。
というかものすごい余裕っぷりが良かったのだろう。
がっつくより、海がきれいだから海みてた。まあ、「求めるな、されば、与えられん」って感じなんだなあ。
銀杏BOYZは僕は好きだが、納得出来ない部分がある。それは「わざともてない」ことだ。
もてたいというか、多分好きな人が出来たとき、峯田は前よりはうまくいくと思う。
なのに純情可憐な女の子を追い求めてる歌を歌って、実際はそんな子も男の幻想にすぎないかもしれない
ということもわかっていて、それでもそんな女の子を追い求めていて、実際に好きになっても、アタックすることも出来ない、そこにはいかない人を歌う。
いかないのではなくいけない。と峯田は言うかもしれない。最初はほんとにそうだったのかもしれない。でも、峯田は最近は行かないんだと思う。いけるのにいかない。
今日も峯田は「女の子と楽しくとも思うけど、今曲づくりが楽しくてしょうがない」とブログでいっていた。
うーん、なにがいいたいのか良くわからなくなってきた。結局峯田と自分のスタンスは同じじゃないか。
僕はどこかに違うやり方があるんじゃないかと思う。銀杏BOYZは、峯田は、今本当に素直なのか。そこだけ気になってる。「あいどんわなだい」確かにいい曲だけど。今までの銀杏BOYZだ。峯田は少しかわったのに、歌のスタイルは変わらないのは少し気になるのだ。あ、でも「光」は新しいか。
うーん・・・ま、いいか。
自分は自分の事やるだけだ。結局峯田さいこー