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あこがれる人、江頭「ワンクールのレギュラーより、一回の伝説」
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満員電車はなんでこんなに面倒くさいのでしょう。

本をひらくスペースもないし、かといって無理やり開いてみていると周囲から冷たい目線を無言で

浴びせられたり、たまには鬱屈した中年男性の必殺技である「舌打ち」も飛び出す始末なのです。

なので、しょうがなく本を鞄にしまい、四方を人に囲まれた肉体の海の中で、まったくやることもなくぼけーっと

しているより他は無いのです。

目の前のわずか5センチ先には中年男性の耳たぶが、電車の振動に合わせてかすかに震えています。

窓から外の景色を見ようにも僕は身長が167センチだから、人垣の隙間から電柱や看板が後ろへ流れていくのがわずかに見えるばかりで、いまいち本腰入れて外を見る気にもなれません。

本腰を入れてみるという表現もどうかと思いますが、なんとなく「景色を見る」というのはもうちょっと余裕を持ってみたいものです。

だが、ふと思いました。考えようによってはこの状況は人生においてかなり貴重な体験をしている最中なのではないかと。

考えても見てください。まったく見ず知らずの中年男性の真横にそれこそキスでもしそうなぐらいに迫っておいて、彼の耳たぶに息を吹きかけながらその耳の細部までつぶさに観察するなんてことは、おそらく普通の日常ではまず起こりえない状況です。間違いなく「変態」とよばれてしまう行為が、この長方形の立方体の中では平気で許容範囲内なのです。もういっそのこと耳たぶを死ぬほど観察していたらスケッチしたくなりました。この感情はきっとプライスレスといっていいのではないでしょうか。

自分の周りにいる人たちも一度も会話もしたことが無いにもかかわらず、男女かかわらずありえないほどの密着状態。ここはライブハウスの最前列かというぐらいの圧迫感を受けます。みなさんはそれぞれの最寄り駅というロックスターのためにこの立方体のなかでエネルギーを溜め込んでいます。

そして、駅について人が出入りするときのそれぞれの策謀と欲望がうずまく瞬間といったら凄まじいもので、

自分の最寄り駅に到着したときに、「いかにしてよいポジションからドアに足を踏み出すことが出来るか、ただし目的の駅につくまでは出入り口に近くても、周囲の流れに翻弄されるポジションではいかんぞ」と考えるのは僕だけかもしれませんが、そこにいる一人一人が、それぞれもてる限りの知略と勇気と、あとは妥協と諦念を抱きながら、それぞれの行動をあの一瞬に起こすのです。

僕はもう最近は、というよりもうずっと以前から、上のようなことを考えたりしながらも、結局めんどくさいのでもっぱら流れに任せていますけどね。

あのときのみんなの出すパワーと、ルール無用の残虐ファイトっぷりは筆舌に尽くしがたいもので、僕が始めて満員電車の出入りを体験した時は「大人ってなんて常識のないやつらなんだ」と思って社会に絶望して泣きそうになったことを今でも思い出します。思えば僕の社会への見方が変わっていったひとつのきっかけだったと思います。

そう、普段は微笑を浮かべながらしゃれたコーヒータイムをすごし、会社ではきっちりと仕事をこなし、部下にやさしく上司をよく助け、家庭では奥様と子供たちのことを常に大事にし、税金はおろかNHKの料金まで、1円の滞りもなく収め続けてていそうな「歩く常識」のように見える紳士でも、出入り口に来たとたん、ものすごい形相で人の足を踏みつけていき、舌打ちはするは、おまけにエスカレーターの割り込みまでして、乗り換えのホームに急いでいく姿はもう僕にはとても正視出来るものではありません。神経の細やかな、なにごともオブラートにつつんで、日々の出来事を闇に葬りさりたい性分の僕は、もうそういう「車にのったとたんに人格が変わる」みたいな人々のありさまをみるだけでえらく動揺してしまうのです。

そんなことを考えているうちに電車は新宿駅にたどり着き、僕は大勢の方の意思のなかでもみくちゃに翻弄されながら、

釣ったばかりの魚みたいにあちこちびちびちはねるように電車の外に出たのでした。

なんとなく満員電車の、あの人垣の隙間から見える景色も悪くないなあと思いながら。

なんていう感想文は、きっと遅刻の理由にはならないんだろうなあ。今日もマックでバイトだ。うう。

 

 

今日読んだ本 三谷幸喜 「オンリー・ミー」

 

あのー、なぜか今日、課長になってしまいました。

ま、名前だけだから、実際なにやるってわけでもないんだけどね。

 給料上がるわけじゃないらしいし。なんたらかんたら管理課課長です。

バイトしてる課長がいるなんて、アグレッシブな会社だなー!パイオニアだな!

課長業界のパイオニア!

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